ニペソツ岳登山(2002.8015)

ニペソツ岳 Mamiya7 43mm/F4.5 f11 1/4秒

 今年の天気はどうしたものか、8月に入って晴れた日がほとんど無い。というよりも、雨ばっかりである。普通の登山の場合、多少の雨は天気図を見ながら決行するが、こと写真撮影がメインの場合は、雨は禁物だろう。なんといっても、機材が濡れてしまう。プロならそれも消耗品でしかたないだろうが、アマチュアの場合、機材は駄目になるは、雨の中の登山は楽しくないはとダブルパンチはちときつい。

 それで、天気の回復を待っていたら、8月14日になってしまった。この日から数日は晴れそうである。今回の山は、ニペソツ岳。2012mである。北海道の山は、一番高いのが、大雪山旭岳(2290m)。旭岳を中心として2000mを越える山がたくさん集まっているところを表大雪という、それに対して、その東側を東大雪というが、その東大雪の中で最も高い山が、このニペソツ岳である。まあ、高いと言っても本州の山に比べれば1000m以上低いのだからたいしたこと無いのかも。ただし、日帰り登山の場合、観光地を除くとたいてい交通機関の便がないか、あってもすごく不便。今回も自家用車以外は無理であった。また、北海道の山には営業山小屋というものが存在しない。それほど、登山人口が少ないということと、5月や11月の連休は雪が多くて使えないという事情もあるのだろう。

 14日は、午後6時に自宅を出発した。まだ暗くはないものの荷造りをしていたら、こんな時間になってしまった。今回の機材は、マミヤ7に43mm/f4.5のみである。ガイドブックによると、登りが4時間50分だから、日帰り登山としては、けっこうな山だろうという判断である。また、登山口までそうとう距離(200km強)があるので帰りに疲れてしまっては車の運転が危ないということも考えた。途中セイコーマート(コンビニ)に寄って、明日の朝食と昼食のパンとおにぎりを買う。そのまま走っていったら、そういや、飴も欲しいなということになり、次の町で飴とチョコレートも買う。あちこち寄ったら真っ暗になってきた。

 私の家と登山口の間には、日勝峠がある。はっきりいって自分で運転して越えたくない峠の中で一番の峠である。高さも高いし、車の量も多い。加えて、登り2車線、下り1車線なんだけど、これがまたみんなびゅんびゅん飛ばす。ここでは書けないくらいのスピードでカーブを曲がっていく。こちらは、怖いので登り車線を走って上がったが、下りは1車線。後ろからトラックが迫ってくると、しかたないのでアクセルを踏み込む。一応乗用車だけど、今履いているタイヤは昨シーズンに使用を終えたスタッドレスタイヤ。濡れた路面やブレーキ性能は20%くらい落ちるタイヤである。だから、今年の夏はゆっくり走っているのだけど、バックミラーに映るトラックはそんなことに関係なく怖いのだ。冷や冷やしながら峠を下りると、清水町。ここから、鹿追町、然別湖、糠平湖、ニペソツ岳登山口へ走るのが最短距離になる。というわけで、暗い道に車を進める。

 然別湖までは、以前走ったことがあるが、その先はまだ行ったことがない。それらしい道を走っていくと、最後のホテルを右に回る道になった。道は急に細くなる。なんとなくホテルの焼却炉にでも続くような道に感じる。道を間違えたかな?と思ったがどうも行き止まりにならずに、その細い道はずっと続いていた。暗くて中央線もガードレールもないが、右側は湖のよう。しかし、ずっと走ってもなんにもない。外灯もないような細い道に車を止めて地図を見たら、前後から来た車に衝突されかねないのでしかたなくそのまま進む。しばらく走っていったら山田温泉が見えてきた。といっても、山の中の一軒家である。ここに車を止めて地図を見る。どうやら道は間違ってないようだが、糠平湖まではまだ道がくねくね続く。うんざりしながら走っていくと、ガソリンが少ないことに気づいた。こんな山の中でガス欠になったら朝まで誰にも助けてもらえない。それで、どうしようもないので、なるべくアクセルをふかさないようにして糠平湖へ出た。ここは温泉町だが、ガソリンスタンドは、午後9時まで開いているわけがない。それで、覚悟を決めて登山口へ向かう。

 ガイドブックによると、登山口は2つある。一つが幌加温泉。もう一つが杉沢出合である。幌加温泉コースは、登山口の標高が低いのでコースタイムが1時間ほど長くなる。今回は、杉沢出合コースに決めていた。幌加温泉の前を通ると立派な登山口の表示がある。おそらくここから3kmほどで十六の沢の入り口が見えてくるはずである。杉沢出合とは、杉沢とこの十六の沢がぶつかったところという意味である。ところが、3kmほど走ったがそんな道がない。5kmかな?と思ってもう少し行ってもやはり道はない。おかしいなと思っているうちに「三股」の表示があった。これでは行きすぎたかと思ったが、なんとその少しすぎたところにニペソツ岳、石狩岳、音更山の登山口があった。幌加温泉の立派な表示とはまったくちがって、大きな板に書いてあるのだが、その板が、横に割れて、それがずれている。夜だと見逃してもおかしくないような看板である。

 道を少し入ったところに入林届けのポストがあるので記入した。今日はお盆なので人がけっこう入っている。そこから1kmほどで石狩岳、音更山とニペソツ岳の分かれ道となる。車を左に進めて時速30kmほどで走っていく。砂利が浮いていてハンドルを取られるし、カーブが多いので慎重に車を進めた。ゆっくり走ったせいもあり、15分ほどで杉沢出合に到着した。車が7台ほど止まっている。どうやら、みんな車の中やその横にテントを張って寝ているようである。時刻は午後9時半。遅く着いたことを申し訳なく思い、こちらも終点から少し戻ったところの道路脇に車を止めた。道が狭いので、少し広くなっていて平らなところはなかなか無いのである。助手席を倒してマットと寝袋を広げ潜り込んだ。でも、なかなか眠れない。前夜は寝たのが午前1時だったなあと考えているうちにうとうとし始めた。

 バタンという音で目が覚めた。なんだろうと思い、外を見ているとぼんやりと明かりがついている。前に止めた車の人が起きだし、ドアを閉めた音だった。時刻は午前4時。6時間ほどの睡眠だった。こちらも起きだし、朝食にパンを詰め込む。身支度をしていると、前の車の人がキャップライトを付けて出かけた。私も負けてはおれず、4時25分登山開始。

 初めは、木によじ登るような道から尾根にとりつく。こんな道が続いたらすぐに頂上だなあと思っていたが、もちろん、そんなことはない。すぐに傾斜が緩くなってきた。歩き始めて10分も経つと、心臓がバクバクして胸がむかむかする。どうも、さっき食べたバターパンが原因のよう。参ったなと思いながらも、少しペースを落として進んでいくと、一人追い抜いた。汗が噴き出てくる。そうこうするうちに明るくなってきた。また一人追い抜く。30分ほど歩くと、さすがにばててきた。水を飲む。ニペソツ岳は残雪が有れば別だが途中に水場はない。一休みしていたら、さっきの人に抜かされた。この二人とは相前後しながら登ることになるだろう。話をしてみたら、一人は音更(おとふけ)から来たおじさんで今回が7回目という。ベテランである。このベテランがいうには、もう少し行くと大きな岩があって、そこまでだいたい1時間とのこと。岩ってどんなだろうと思っていたら、なんと崖に張り出している大岩だった。登山道は、この岩でほとんど遮られている。よくみると、古いロープがついていて、どうやらこの岩をへつって行くのが正規の登山道のよう。指掛かりを探すと、ちょうど良いところに指がかかる。これなら落ちる心配もないということで、下を見ないようにして大岩を回る。まさか、こんな道がしばらく続くのではと思って、岩を回ってみたら、なんとそこで終わり。ものの10秒ほどで元のような道に出る。

 ばててきたなあと思いながら歩いていると、2時間ほどで前天狗到着。ここからのニペソツ岳の写真は有名である。もし、天気が悪くて頂上に行けなくても、ここまでは来て、写真を撮りたいと思っていた場所である。しかし、なんとガスがかかって当のニペソツ岳だけが見えない(;_;) 少し休んでいると、さっきのおじさんが「見えた、見えた」というので、カメラを構えて手持ちで2カット。もやっとした写真になるが、どうしようもない。とりあえずの押さえである。

 今回フィルムは、ベルビアとリアラの2種類を用意した。普段はリバーサルしか使わない(ネガフィルムを初めて買った(^^ゞ )のだが、なにせ、リバーサルからプリントすると、びっくりするような値段になるので、今回はネガも使ってみようということにした。初めはベルビアである。

 ここでは、先ほどの2人のおじさんの他、2人増えている。どうも、この音更のおじさんをガイド役に仕立てて、登ろうという判断のよう。こちらもご一緒をお願いする。音更のおじさんは、ここでサブザックを出してデポする。私は、機材一式を持ち歩いているので、8kgほどをずっと背負っていたが、そのせいか、それとも体力のせいか、この4人のおじさんに付いていくのがやっとである。

 前天狗から天狗岳の左側をトラバースし、天狗平にでる。天狗平から山頂までに何カ所か沢に落ち込むように登山道が切れているところがあって、そこにタイセツトリカブトが咲いていた。お盆をすぎているのでもう花の時期は終わったかと思っていたが、ちょうど満開である。不思議なもので、登山道ではここだけでしかみられなかった。ここから、山頂を右にぐるっと巻いて頂上に至る。山頂の直前の岩場でナキウサギの声を聞く。しばらく佇んでいたら姿を現した。さすがに近寄れば逃げていくが、そう人間を怖がっているふうでもない。今回は、47mmのレンズしか持ってきてないので勝負にならないが、300mmクラスのレンズがあったら粘ってモノにしたい被写体だ。私は他の4人に10分ほど遅れて到着。登山時間は、4時間40分。ほとんどガイドブックのコースタイムである。途中で写真を撮ったりしていたので、こんなものかも知れない。頂上からの展望は、ガスと雲のせいであまりよくない。隣の石狩岳が見えたり見えなかったり。大雪は、ほとんど見えない。お弁当を食べて、下山開始。

 私は、昔登山で膝を痛めてから、下りは苦手である。登山時間と同じくらいかかる上に、痛みがひどい。特に右膝が痛いのだが、最近はそれをかばってか、左膝も痛み出すことが多い。今回は、それに備えて、両膝にサポーターを巻いてきた。しかし、何となく感触が変である。ズボンをまくってみたら、サポーターが下にずれていた(;_;) ステッキと使いながら、ゆっくりと下っていく。不思議なもので登りや平地は全く痛くない。足をつけても痛くないが、その着けた足を、膝を曲げながら離すと痛みが来る。やはり2時間近くかかって前天狗に戻ってくる。今回は4人とほとんど遅れなかった。三脚を立ててガスが切れるのを待つ。ガスは、ニペソツ岳見えるようになると、天狗岳を覆い隠し、なかなか全部見せてくれない。それでもシャッター切らないことには写真にならないので、これも押さえだなあと思いながら、何枚か写すうちリアラが無くなった。またベルビアに替える。待っていてくれたおじさんたちは待ちくたびれてめいめい下山し始めた。こちらは、まだ12時前なので、2回目の昼食を食べて、天候の回復を待つ。せっかく47mmを持ってきたのだから、もう少し近くで撮れば良かったなと思いつつも、もうそうも言ってられず、12時撤収。

 下山開始して、すぐにまた膝が痛み出す。こういうときは、なにか楽しみを考えながら歩くのが一番である。そうでもなきゃこの痛みを我慢できない(^^ゞ 下山して何が楽しみかというと、温泉である。大雪山周辺は温泉の宝庫。今回の登山口の近くにも、幌加温泉、糠平温泉、然別湖温泉、山田温泉、ちょっと離れるが秘湯の菅野温泉などがある。「温泉、温泉」とつぶやきながらやっと下山。前天狗から2時間半かかった。登山時間よりも30分も多い。

 もう誰もいないだろうと思っていたら、音更から来たおじさんが、車の中に鍵を入れたままロックしたとかで、みなさんまるで私を待っていたかのよう。挨拶をして分かれる。

 まず、ガソリンスタンドを探して糠平温泉へ向かう。スタンドで聞いたところでは、「湯本館がお湯が一番」ということで、そこに決定した。しかし、温泉の建物は、まるで一昔前の下宿屋のような佇まい。2階を歩く足音が玄関にばたばたと響く。入湯料500円を払ってお風呂に向かう。なんと、お風呂は階段を下りていかなければならない。こちらは、足が痛くて手摺りに掴まりながら歩く。お風呂はあまり広くないが、確かにお湯は一番みたいである。露天に出てカップでお湯を飲む。ちょっと硫黄の混じった味。ナトリウムはあまり感じなかった。

 温泉に入ってさっぱりしたら、つぎはアイスクリームである。もうこれしかない。湯本館にはアイスクリームを売ってなかったので、糠平温泉の町中の店で買う。アイスクリームをなめながら、然別湖への道は止めて、遠回りになるが、道がまっすぐの士幌、鹿追コースを回って自宅に向かった。

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