パノラマカメラが欲しい  その1 (2004.2.1)

 やっと完成したジナーシステムだが、いろいろ操作して、まだ1枚も写真を撮っていないうちから、あることに気づいた。というよりも、思い知らされた。それは、「ガサばる」ということである。きっと何度かは山に持っていってそれなりに使うのだろうと思うが、まず第一に、ケースをどうしようか悩む。まさか手に持っていくわけにも行かないし、あのパッキングしにくい形状からして、組み立てたまま運ぶとすればアルミケースが最も適していると思うが、アルミケースは意外に重いのと、なによりもザックに入りにくい形である。それでは、分解して運ぶしかないが、ジナーは下部が独特でライズ用のパイプなどは細いのでやはり何かのハードケースに入れたいのだが、専用のものはやはりガサばるのだ。

 どうしようかということで、さらに考えてみた。4X5が欲しかったのは大きな写真を撮るときにもう1段の粒状性を求めたからであり、普段使いには、6X9で十分だと思う。引き延ばすことを考えれば6X7でも良いかもしれない。しかし、いつも大伸ばしにしているわけでもなく、ポジをそのまま眺めて鑑賞することやプロジェクターの利用もある。被写体は主に風景なので無限が対象になる。広い範囲も写したい。それなら、パノラマが欲しい。そう、パノラマカメラが欲しいのだ。

 パノラマカメラは、ちょっと前に流行った35mmフィルムの上下をトリミングしたものがある。あのフィルムサイズはおそらく12mmX36mmだろう。縦横比は1:3である。このくらいのパノラマなら、パノラマ感は大きいが、このサイズだと引き延ばすと悲しいくらい粒子が見えてしまう。35mm一眼レフに、やはりパノラマがあるが、きっと同じだろう。手元にマミヤ7がある。これにパノラマアダプターもある。これは、35mmフィルムを使って24mmX65mmを得るものだ。一時欲しかったのだが、あるHPを読んでいたら、「6X7をトリミングしても同じ結果が得られる」ということが書いてあって、なるほどと納得してやめた経緯がある。実際、35mmフィルムを入れたのでは、そのフィルムを抜くまでは6X7が使えないというのも、それはそれで不便である。

 すると、もっと大きなサイズのパノラマしかない。そう6X12とか、6X17などである。と、簡単に書くが、実はこれらは手が出ないカメラの代表的なものである。4X5カメラが普段使わないと言ったって、それなりの需要がある。ということは、中古も豊富ではないにしろあるところにはある。ところが、ブローニーフィルムを使うパノラマカメラは、なにしろ他の用途に使いにくいこともあって、それほど数が出ていない上に、同じ理由でべらぼうに高いのだ。もっとも、レンズのイメージサークルの関係からして、6X12はともかく、6X17が安くなるわけがない。カタログを調べてみると、定価で40万円くらい「から」である。仮に中古があっても手が出る値段ではない。少なくともあと20年は無理だろう。6x17は生産中止となっていた。買えないなら作るしかないということだ。

 ジナーF2にホースマンの6X12フィルムホルダーという手もないわけではないが、これだとカメラがガサばるということを排除できない。それに、この方法だと4x5フィルムをトリミングするのと変わらない。ロールフィルムを使えるというメリットはあるが、今回は却下である。

 そこで、以前から温めていた計画をそろそろ実行する時期が来たと決断した。(おお、なんだかかっこいいぞ(^.^)) それは、自作パノラマカメラである。といっても、そんなに難しいことではない。6X12のフィルムホルダーと4x5レンズを木製の枠でつなげばよいのだ。これなら、それほどたいへんでもないだろう。それに、前回ジナーのレンズボードやフィルムホルダーアダプターを作った経験を生かせるのではないかと思う。6x12としたのは、6x17だとホルダーの加工が思ったよりも大変そうだという理由だけで、機会があったらチャレンジしてみたい。

 そこで、材料だが、
1.フィルムホルダーは横幅が大きいものという理由で、マミヤプレスのフィルムホルダーしかないという結論だ。
2.レンズは、いろいろなものがあるが、新規に購入するとなると、10万円では足りないだろうし、ここは使い回すことでやはりプレスの75mm/F5.6とする。
3.レンズは、マウントを外さずプレスのマウントを加工する。こうすることで127mm/F5.6や将来50mm/F6.3を手に入れても使えることになる。
4.つなげる枠は木製とする。材料はチークか黒檀などにしようと考えている。プレスのフランジバックは61mmなのでそれほどたくさんの材料は必要ないのでここでケチることもないだろう。

 で、さっそく製作に入ろう。一番初めは、フィルムホルダーの加工である。フィルムホルダーは、こういうこともあるだろうと思って、マミヤプレスのフィルムホルダーを2個手に入れておいた。いつものe-bayで70ドルほどであった。身近なところにこういうものを売っている中古屋がない身にとっては、e-bayのようなオークションはたいへんありがたい。Yahooはあまりに高すぎて、送料を考えてもe-bayの方が安いというのも変なものである。一応日本に住んでいるんだが住みにくくなったということか。

写真1

 マミヤプレスのフィルムホルダーの上部カバーを外し、巻き上げレバーを取り付けたところ。ちょっとわかりにくいが、右手側巻き上げレバーを操作すると、金属製のベルトがひっぱらさってギアを駆動するようになっている。
写真2

 フィルムカウンター部のアップ写真。この写真は裏蓋を閉めた状態。裏蓋を開けると、写真の真鍮のギア群がフリーとなってカウンターのギアから離れる。真鍮のギアは巻き上げ量を決定しているので、このギア比を変えることでフィルムの送り量を変更することができる(はずである)
 なお、この写真は私のデジカメの近接制限より拡大するために、ケンコーのクローズアップレンズを手持ちでかぶせて使っている。案外きれいに撮れていて驚いた。
写真3

 6x7のアパーチャーグリルを外したところ。まだ、切断前なのでフィルムガイドローラーなども見える。写真の左側(右手側)は余裕があるが、左手側はほとんど余裕がないことがわかる。
写真4

 加工後のフィルムホルダー。これで、横幅が112mmとなっている。右手側を少々大きく切り取ったが、それでも左手側がきつく、フィルムの平面性が問題になりそうだ。これでだめなら、もっと右手側を伸ばして左手側をふさぐしかないと思う。

 とにかく、フォルダーをばらしてみないことには始まらない。プレスのホルダーは巻き上げレバーを外し、ネジを4本外すと簡単に軍艦部(というか上部カバー)がはずれる。動作を見るために巻き上げレバーをサイド取り付け、ダミーフィルムを入れて何度か操作してみた。多くのカメラは、右手で巻き上げるとフィルムが左から右に送られるものだが、このフォルダーは逆に右から左に送られる。いったいどうなっているんだろうと以前から思っていたが、金属製のリボンというか、帯状のもので引っ張っていた。ちょうど3番目に写真で見えると思う。
 裏蓋が開いている状態だと、カウンターのギアと巻き上げのギアがフリーになっていて実際にはフィルムは進んでもカウンターは進まない。また、フィルムが入っていないとフィルムがローラーを回すことがないので真鍮のギアが進まないため、ギアが噛んでいてもカウンターは進まない。実にうまくできていると感心した。

 さて、このフィルム送り量だが、2番目の写真のマイナスネジで留めているギアが上の大きいギアの歯数が32、下の小さいギア(写真では見えない)の歯数が15だった。32歯:75mm=X:120mmの式を解くと、およそ51.2となる。つまり、大きいギアの歯数を52とすると、約122mm送られることになる。今回のカメラの場合、1コマの横幅が112mmなので、フィルムのコマ間は10mm。まあ、いいところだろう。それで、ギアをどうするか、いろいろ考えてみた。特注するとしても、こんなものを1個から引き受けてくれるところがあるだろうか。なければ、自分で作るしかない。真鍮製だし、それほど厚いものではないのだから、加工そのものはたいしたことがないが、精度の問題が大きくつきまといそうである。そこで結論。先送りである。とりあえず、6x7のホルダーなのだから、2回巻き上げれば120フィルムで5コマ撮れる。フィルムのコマ間はとても大きくなるが、ダブる心配は全くない。また、後で考えることにして、次に進もう。

 次は、どうしても加工しなければならないアパーチャーグリルである。まず、6x7用のアパーチャーグリルを外した。プレスのホルダーは6x7と6x9が一部の部品を除き共用になっていると思われる。その共用になっていない部品がフィルムカウンター周りとこのアパーチャーグリルである。それで、そのアパーチャーグリルを外すと、おそらく一緒なのだろう。6x9よりも少々広い窓が露出した。フィルムのガイド用のローラーが取り付けてあるが、これもフィルム室から外す。その上で、鉄ノコでギコギコ切っていった。4番目の写真が加工後のものである。写真が小さいのできれいに切れているように見えるかもしれないが、けっこう曲がっていたりする。まあ、コマ間が広いからよしとしよう(^^ゞ 

 よく見ると、圧板が見える。120と書いてあるものである。それもしっかりと横側が見える。ということは、このままでは左右の圧力が足りず、フィルムが歪んでしまうと思われる。つまり左右がピンぼけになるのだ。マミヤプレスのホルダーは120と220が切替になっている。圧板を取り外してひっくり返すとレールと圧板の間隔を変えることができるというものだ。実は、ここで悩んでしまった。圧板をそっくりと変更することはできないことではない。しかし、その圧板を固定する方法がない。逆に今の圧板に真鍮板などをかぶせて使う手もあるが、そうすると120フィルムしか使えなくなってしまう。実際には120フィルムで5枚撮りとなればよいし、フィルムも現像料もほぼ2倍の関係なので、フィルムの銘柄の少ない220フィルムはあまり使わない。というか、買ったことがない(^^ゞ だから、後者を選ぶことになると思う。これは、後回しにしよう。

 のこった作業は、このホルダーをどうやってカメラに取り付けるかだ。写真をよく見るとわかるが、取り外したアパーチャーグリルの穴が上下に3個ずつ計6個開いている。これを利用してアルミ板を取り付け、そのアルミ板をカメラ本体に取り付けるのが最も簡単だろう。しかし、もともとのアパーチャーグリルが厚かったこともあって、上下の出っ張りが3.5mmほどもあるのだ。つまり、ここを削るか、加工するアルミ板の厚さを3.5mm以上としなければならない。あまりアルミ板が厚いと加工しにくいし、かといってここを削ると強度的に心配なのだ。プレスのホルダーは中央部がたいへん薄いので、変に削って落下させたときに歪むと作り直しになりそうだ。やはりアルミ板を厚くするしかないのだろうか。いずれにしてもフランジバックには余裕があるので、遮光だけは気を付けなければならない。

 写真4の状態で、ダミーフィルムを入れて気づいたことがある。フィルムガイドローラーが取り付けてあった四隅の溝に120フィルムの裏紙とフィルムを止めているシールが引っかかってフィルムが送られなくなった。新品のフィルムならこんなことにはならないのかもしれないが、この溝も何かで埋めておく必要がありそうだ。

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