ペトリFT(2003.6.22)

 去年だったか買ったレンズの本にペトリの標準レンズの作例が載っていた。それによると、階調性が吹っ飛んでいたり、色が偏っていたりするものの、「これはこれで個性」ということだった。しかし、その本の作例ではあまりよくわからない。本の写真なんてそんなものである。というわけで、一度ペトリのレンズを使ってみたかった。
 じゃあ、買えば!! と思っていたが、なかなかペトリなんて売っていないのである。札幌の中古屋ももちろんだけど、雑誌の広告にも値段が安いペトリは出てこない。安いだけではないのだろう。きっと、すぐに壊れるという評判のカメラを扱っても商売にならないんだろうと思う。では、オークションかというと、これが、yahooはやっぱり高い。いつも思うことだが、yahooは買うところではなく、売るところである。中古屋に売るよりもずっと高く買ってくれる。
 そういうわけで、今回も、たまたま見ていたらe-bayに安いペトリFTがあった。標準レンズと35mm/F2.8付きである。まあ、こんなもんだろうという値段でビットを入れると、他に誰も買い手がなく、そのまま落札。25ドルである。送料込みで5000円ほどになったが、35mmレンズが付いているのでジャンクとはいえ安い買い物である。

 1週間ほどで、アメリカから送られてきたペトリFTは、実に汚かった。なんていうのか、砂があちこちに付いているのである。もしかして、砂浜で使ったまんまじゃないだろうか。このままでは、壊れるまでにいくらも時間が必要ないという感じである。それで、例によって分解清掃することになった。

 まず、裏蓋を開けて清掃する。フィルム室に砂が入っている。次に、底蓋を外した。これは、簡単に外れた。絵の具の筆を使って砂を落とす。さすがに底蓋の中はそれほど砂は入っていない。最後は、軍艦部である。巻き上げレバーを外し、巻き戻しレバーを外した。電池蓋を外し、シャッターダイヤルをはずした。最後にフィルム感度設定ダイヤルを外そうと思った。しかし、これがとれないのだ。軽くドライバーでこじって見たが、どうもうまくいかない。こういうとこは、力まかせにやると壊してしまうということを経験から学んでいるので、NIFTYで質問してみた。さすがに、ペトリなんか使う人がいないのだろう。なかなか回答が付かなかったが、AKIさんというボードヘルパーが「CRC5−56を垂らしてみたら?」ということで、ヒントをくれた。そこで、やってみたが、全く変わらない。う〜ん、困った。
 ペトリFTの内部そういやと思って、2チャンネルで質問したら、「カシメてあるので、軍艦部を持ち上げるととれる」という回答だった。引っ張ってみると、あら、不思議。ズボッととれた。軍艦部内部の写真をお見せしましょう。巻き上げレバーの付近に着いている、茶色のつぶつぶが全て砂のようなものである。これを、筆を使ってきれいに清掃する。一粒でも残っていると、ギヤのかみ合わせなどに入ってしまいやっかいだろうと思い、掃除機を回しながら陰圧にし、筆ではじくように砂を飛ばした。

 さすがに、完全とは言い難いが、見えなくなるまでやったので、しばらく大丈夫だろう。

 ペトリFTは、巻き上げレバーの下のあたりに空間があって、そこから簡単に砂などが入る仕組みになっている。
 それにしても、こんなにまんべんなく砂が入っても大丈夫なカメラって意外に丈夫なカメラなんだろうか。それとも、今後、すぐに壊れるんだろうか。こりゃ、壊れないうちに処分した方がよいかもしれない。

 さて、軍艦部がきれいになったところで、カメラの内部を見てみよう。すぐに気づくことがだ、このカメラの露出計は、どうもオリジナルから少々いじってあるようだ。
 というのは、あろうことか、配線の一部がエナメル線なのだ。写真でビニール線が見えるだろうが、それがおそらくオリジナルの導線だろう。その周り、電池ボックスのあたりにエナメル線の配線が見える。エナメル線の配線が見える
 それもである。普通この手の配線は、きちんと長さを測ってあまりぶらぶらしないようにしてある。ところが、このエナメル線ときたら、ずいぶん余っていて、それを折り返してあるのだ。いったいどういう考えでこんな修理をしたのだろう。露出計が動かなかったら、間違いなくここが原因だと思いつつ、とりあえず、軍艦部を元に戻した。

 ペトリFTの電池は、MR−9である。知っている人も多いと思うが、この電池は、水銀電池で、現在生産されていない。私も、この電池を使うカメラを何台か持っていて、そのために電圧変換回路が内蔵されている関東カメラ製の水銀電池アダプターを使用している。このアダプターの欠点は値段が高いことである。クラシックカメラなんだから仕方がないと思いつつも、1個3000円近い値段だといくつも買いたい値段ではない。1つを使い回しているのだ。
 ペトリFTも、これを使い回そうかと思っていたのだが、先日札幌のヨドバシカメラに行った際、いいものを見つけた。それは、ドイツのVARTAという会社から出ているMR−9と同サイズのアルカリ電池である。名称は、V625Uである。MR-9は1.35V、V625Uは1.5Vなので、若干電圧が高いが、露出計自身が狂っているだろうから、どうせ補正しなければ使えないのだし、外部露出計で校正して使えば、その後問題ないだろうということになった。ペンタックスみたいに、電圧の補正のいらないカメラもある。

 さて、清掃の終わったペトリFTだが、意外にいい感じである。頭でっかちのペンタ部分はキヤノンEOS5やミノルタαなんかのデザインにも似ている。けっして両社がまねしたものではないと思うが、安定感がないようでボディが薄いせいか、あまり気にならないデザインだ。普段使いのOMと比べると、ちょっと横幅が大きい。しかし、許容範囲である。使いにくいのは、スピゴットマウントである。私はスピゴットマウントのカメラが初めてなので、ついレンズを落っことしそうになるのだ。キヤノンFDは持っていないのだ。露出計の絞り込み測光のスイッチも何となく使いやすそう。視度補正レンズは、ペンタックスMタイプのものが適合する。しかし、たまたま手元にあったニコンのものを使用した。ペンタックスMタイプの方が実は安くてよい。

 ファインダーをのぞくと、マイクロマットのスクリーンが入っている。清掃したので、ファインダーはきれいである。ピントは思ったよりも合わせやすい。色づきもあまりない。Cdsを使用しているため、露出計のスイッチを入れると針が微妙に揺れ動く、一度明るい方に触れても戻ってきたり、その逆だったりと、使いにくい露出計だ。

 レンズは、55mm/F1.8の標準レンズは残念なことにバルサムが剥がれている上、前面レンズのコーティングも剥がれかかっている。ここまでひどいと、おそらく逆光では駄目だろう。35mm/F2.8はきれいなので、こちらに期待したい。ペトリのボディはともかく、レンズに期待して購入したのだから、せめてこのレンズに活躍してもらいたいのだ。評判通り写りが良かったら、レンズマウントを改造してもおもしろいかもしれない。そのくらいボディは不安ということだ。手元にあるコニカFC-1にあてがってみたら、無限がきちんと出る、というか、明らかにオーバーインフだった。このくらいフランジバックと口径が違うなら素人でもアダプターが作れるかもしれない。もっとも、コニカはシャッター優先AEなので、露出計はものすごく使いにくいのだが、これは仕方ないだろう。

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